05_ 20歳、日本の中心へ
飲むか、飲まれるか。欲望の夜
きゅーぶです。 04の続き。
ラウンジで働き始めてから、 少しずつ自分を指名してくれるお客さんがつくように。 その中で言われたことがある。
「クラブの方が向いとるんやない?」
ラウンジやキャバクラは、 どちらかというと明るくて、 きゃぴきゃぴしたコやギャルっぽいコが強かった。
でも当時のわたしは、 そこまで派手に盛り上げるタイプでもなく。 仲いい友達も同じく落ち着いたタイプで、 一緒に席に呼ばれることが多かった。
だから余計に、 「ふたりともクラブ向きっぽいよね」 みたいな話になることがあった。 クラブってどんな世界なんだろ。 その頃から、少しずつ気になり始めた。
ちょうどそのタイミングで、 一緒に働いていた先輩がラウンジを辞めて、 地元でも有名なクラブで働き始めた。 でも、その先輩はかなり大変そうだった。
「楽して稼げる世界じゃない」
そんな話も聞いてた。 もちろん怖さはあった。 でも同時に、興味もあった。
地元のクラブに行く選択肢もあったけど、 それは先輩の後を追いかけるだけで なんか違う感じがした。 どうせなら、もっと別の世界を見たい。 もっと大きい場所で、 自分がどこまで通用するのか知りたい。
そう思って、 わたしは東京に行くことを決めた。 たしか20歳の7月。 決めてからは早かった。 1ヶ月後の8月には、 もう東京へ行くつもりで動いていた。
最初はひとりで行くつもりだった。 でもその頃、別の友達が当時の彼と別れて、 「わたしも行く」 と言い出した。
そこから、 ふたりで東京に出ることになった。 とはいえ、 どうなるかわかんなかったので、 一人暮らしの家は残したままにしてた。 保険というか、逃げ道というか。 勢いはあったけど、 全部を捨てるほどの勇気はまだなかった。
でも友達は違った。 福岡ではひとり暮らしをしてた。 地方が地元のNちゃん。 なんと、家を引き払って東京に来た。 今思うと、 彼女の方がよっぽど覚悟が決まってる。
そしてふたりで東京へ。
でも当然、 店なんて決まっていない。 ウィークリーマンションを借りてた。 働く場所はこれから探す状態。
とりあえず歌舞伎町に行ったり、 面接を受けたり、 いろんなお店を見て回った。 東京の夜は、 地元とはまるで空気が違った。
行き交う人の量も、 煌々としてるネオンの明るさも、 流れるお金の匂いも。 全部が大きくて、早かった。 ただ、 歌舞伎町を見た時に思った。
わたしのエリアはここじゃない。
うまく言えないけど、 街の圧が強すぎた。 派手だし、雑多すぎて、 なんか飲み込まれそうな感じがした。 そんな中で、 一緒に来たNちゃんは2週間ほどで、
「やっぱり合わないから帰る」
と言った。 は!?!? ちょっと早くない? (沈黙) わかるけど、早すぎやない?
しかもNちゃんは、 家を引き払って東京に来てる。 帰る場所どうする問題が発生。 話し合った結果、 わたしが保険で残してた一人暮らしの家を、 その子に譲るような形になった。 逃げ道として残してた場所を、 自ら手放すことに。
そしてわたしは、 1人東京に残ることになる。
ここから急に、予定が崩れる。 ふたりで住むつもりだったウィークリーマンション。 でもNちゃんが帰るとなると、 わたしひとりで二人分の費用を払うことになる。 いや、無理。 さすがに無理すぎる。 早く次の場所を探さんと。
働く店も、住む場所も、 同時に決めなきゃいけない現実が 一気に押し寄せてきた。 東京に来たら、 何かが変わると思ってた。 でも実際は、来た瞬間から生活費との戦い。
自由には、 やっぱりお金がかかる。 それでも、 帰ろうとは1ミリも思わず。 せっかく来たのに、 ここで戻るのは違う気がした。
帰る場所はなくなった。
あとは戦うのみ。
歌舞伎町は違う。 じゃあ、 わたしはどこへ行くのか。
もっと静かで、 もっと洗練されてる場所。 でも欲望うずまく街。 そうして辿り着いたのが、 六本木だった。
この頃のわたしは、まだ知らなかった。 東京の夜は、自由も欲望も、 全部スケールが違うことを。
そして…飲むか、飲まれるかの夜が
ここから始まる。
06へ続く。
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